今日の気になる

安保法案6割が反対の根拠

よく特定野党さん達などが「戦争法案には6割が反対している」とか言うのですが、この根拠ってなんでしたっけ? そもそも、「戦争法案」なんてミスリードしている時点でフェアな調査ではないのですが。

で、とりあえずWEBで「安保法案 反対 6割」で検索してみたのですが、それっぽいのがないのですよね。ただ、ロイターが企業を相手に調査したもので6割が反対というものがあったのですが、これは対象が「ロイター短観と同じ期間・対象企業で実施。資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に8月3日─17日に行った。回答社数は270社程度」ということで、相手は企業です。しかもこれは別に安保法案そのものに対して反対というわけではなく、先にデフレ対策をしてくれという意見が6割を占めたという話です。まあ、どちらにしろ国民に調査したものではないので、国民の6割が反対という根拠にはなりません。

あと見つかったのはテレビ朝日世論調査(ANN世論調査)ですが、こちらの条件は以下の要に記載されています。

【調査日】2015年8月22・23日(土・日曜日)【調査方法】層化二段無作為抽出(全国125地点)
【対象】1000人【有効回答率】46.2%

仮にこれが6割の根拠とすると、たかだか1000人の回答で、しかもその半分もいかない462人の回答をもとに、6割が反対とか言っているわけです。300人にも満たない人数の意見をもとに「国民の6割が反対」とか称しているわけです。まあ、あくまで根拠がこの調査としてですが。

でまあ、仮にこれで十分根拠になりうるとします。
これの項目の一つに安保法案についてがあって、反対が55%となっています。これが根拠ですかね。
ただ、同じ調査の中でこの法案の国会審議について、「今国会での成立にこだわるべきではない」が64%を占めています。あるいは、こちらが根拠かもしれません。ただし、この項目のほかの回答を見ると、今国会で成立が11%、廃案にすべきが22%です。この項目は複数回答ではないので、64%の人は安保法案自体を廃案にすべき=反対ではないわけです。正直、この二項目の回答の乖離がよくわかりません。まとめると以下です。

質問 肯定的回答 否定的回答
安保法案に賛成/反対 賛成:22% 反対:55%
法案の審議について 今国会で成立:11% 廃案:22%

今国会で成立の11%の人は、おそらく法案自体に賛成の22%の中に含まれるのでしょう。賛成の残り11%は法案の審議に時間をかけるべきという考えだ、ということはわかります。問題は法案に反対の55%です。22%は即座に廃案にすべきと考えているのでしょう。でも、残り33%は審議が必要と考えているわけです。安保法案に反対なのに審議が必要とはどういうことでしょう?
ここからは想像になりますが、この調査では「この安全保障関連法案について、賛成ですか、反対ですか」という問いです。つまり、あくまで今審議されている法案について反対だという人が55%ということです。しかし、33%の人は審議に時間をかける必要があると言っているのですから、その人たちは安保に関する立法そのものに反対しているわけではないと思われます。私はそう解釈しましたが、違う考え方があるのであれば、それを示していただきたいです。

少なくとも、上の調査では直ちに廃案と言っている人は2割強しかいないわけです。1割が今国会で成立、6割強が審議を継続すべきと言っているのがわかります。野党が言っている「6割の国民が反対しているので廃案」というのは、調査の結果からみるとおかしいのです。今国会で成立と審議継続を合わせると4分の3の国民が「今国会では廃案にはしない」と言っているのですが、なぜか特定野党や「戦争法案」反対論者は6割が戦争法案に反対しているから廃案にすべきと言い張るのです。

まあ、これは6割の根拠が上記の調査によるものとすればの話です*1。結局、根拠がよくわからないので何をもとに話をすればよいのかわからないので、ぜひ「国民の6割が反対」の根拠と、具体的に反対している内容(安保に関係する立法そのものなのか、今の法案なのか)を教えてほしいです。

安倍談話の「主語があいまい」批判

「安倍談話の主語があいまい」とかいまだに批判している人がいますが、実は「私たち」、「私たち日本人」、「日本
」、「我が国」という主語がほとんどの文に明確に示されています。明確に主語のない文章も前後の文脈から「私たち日本人」が主語であることは類推可能です。そもそも、日本国首相として、最後に「首相 安倍晋三」の署名入りの文章を読み上げて、主語が不明確とか何を言っているのやら、という話です。

まあ、安倍談話の内容について俺は認めないから勝手に「私たち」とか「日本」を代表するな、という意見はあるかもしれません*2。ただ、それは主語があいまいということとは話は別です*3

まあ、「あいまい」と言い張るロジック自体は分からないでもないです。先の大戦は軍人や政治家等の所謂「戦犯」などが国民を無視して勝手に始めたもので「自分たち国民」は悪くない。だから「私たち」といった自分たちも入る「あいまい」な言葉ではなく、軍とか時の政府とか責任主体を明確にしろ、と言いたいのでしょう*4。そういう意味では安倍談話は「日本」、「日本人」が道を誤ったと明記しており、被害者面したい人達には不満なのでしょう*5。つまり、あいまい論者は歴史に向き合いたくないわけです。あなた方にも実は責任の一端があった、と言われるのが嫌なわけです。

20年前の村山談話はまだ戦前、戦中の人も多い中で、そういう戦争を経験した年代が教訓を若い世代に伝えていくというものです。しかし、安倍談話の中にもある様に戦後生まれが多い現代の状況では、「私たち」は過去に向き合い未来へ伝えなければならないのです。

最後に、なぜ主語が「私たち」なのでしょう。それは、首相とか政府が考えて何かをやるのではなく、「私たち」全員が過去に向き合い、現在を考え、未来に伝えていく必要があるからです。政府や政治家、政党がやることを批判するだけでなく、自分たちの問題として捉え、考え、意思を表明する必要があるのです。会社に批評家は要らないという話はよくありますが、そういう意味では国民にも批評家は要らないのです。

*1:他には河北新報が東北6県の若者100人に調査したものも反対が62%とのことですが、これは地域も年代も限られているので、国民全体の話の根拠とするには薄く感じます。

*2:とは言え、法律上安倍首相は日本の代表者であります。

*3:そもそも、「公式の英語版」が公表されており、こちらは当然ながら主語が明確です。そもそも、首相が個人的な意見を述べたところで何の意味もありません。

*4:それならそうと言うべきとは思いますが、軍部に「強制されて」戦争報道を行った立場では結局自分たちも責任主体に含まれかねないので、その辺はあいまいにしているのでしょう。

*5:特に軍部、政府に反対し続けた左寄りの方々にとっては「私たち」なんて言われることは論外なのでしょう。