「赤い靴」騒動

今日のニュース記事を見ていて、『赤い靴の”定説”を正す会』が発足したというのを見かけました。なんでも、童謡「赤い靴」にはモデルとなった少女がいて、という”定説”があるそうですが、それはその定説を紹介したテレビ局のプロデューサーの捏造であり、近代日本の精神が投影された文化遺産*1である「赤い靴」への落書きだから消さなければならない、という主張のようです。

事の真偽は分かりませんが、結局、どっちもどっちという気がします。野口雨情の作品について調べてみましたが、あるサイトには「子供の教育はよい童謡を歌うことが大切と力説して」いたとあり、「土のにおいがする詩人」と言われ、地方色の濃い、素朴で分かりやすい童謡を数多く作った、とあります。別のサイトでも「庶民的で郷土色豊かな味わい」とあります。雨情自身、北海道開拓にも関わって挫折して戻ったという事情はあるようですが、その歌にそういうメッセージ性を込めていた、という感じでもなさそうです。

それよりも驚いたのが、Wikipediaの記述です。この会の代表であり、捏造説を取り上げる作家*2と同じ名を語る人物が、熱心に「捏造、やらせ、偽造である」とのやたら刺激的な言葉を使って批判文章を書き込んでいました*3Wikipediaは辞典であり、告発の場ではないと指摘されても、その主張は分かるが今も定説が募金に利用されているので、そういうことを説明する必要がある、と言ったことを(他人と議論するノートの方ではなく)本文中に書いています。結局、そういう刺激的な部分は穏当な者に改められ、捏造説についても取り上げる形で落ち着いたようです。まあ、辞典なので当たり前ですけど*4

正直、こんな騒動が起きていることを、当の雨情は嘆いているんじゃないかと思うのですが。

*1:なんでも、「社会主義ユートピア運動の挫折の隠喩」なのだそうです。

*2:元々はTV番組の脚本家で、ウルトラマンシリーズや、「特捜最前線」等に関わっていたそうです。

*3:現在は抹消されています。

*4:だいたい、Wikipediaの右にあげる基本方針に反している可能性があります。個人攻撃はしない、独自研究は載せない、中立的な観点、検証可能性、同じ記事への連続投稿を減らす、自分自身の記事をつくらない