今日の天声人語

ハドソン川の奇跡」で一躍英雄になった機長が、リストラによる安全性への懸念を議会で語ったことを引用してのお決まりの「心配だ」という話。まあ、何を今更言ってるのと言う感じですが。

で、引き合いに出されているのが先日のアメリカとトルコの事故なんですが、どちらもまだ原因が不明なんですよね。特にアメリカの方は悪天候が原因じゃないかと言われています*1。リストラによる安全への影響の話の流れの中でそれらの事故の話をしたら、まるでそれらの事故がリストラの影響で運行や整備に問題があったかのようじゃないですか。まあ、そういうことが無いようにして欲しいという話だと言いたいのでしょうけど。

旅客機のハイテク化はめざましい。だが飛ばすのは人間だ。人と機械の調和なしには安全はおぼつかない。互いの「協力関係」が人間の側から崩れかけてはいないか。機長の心配は、そのあたりを突いているようだ。

いや、「今」ベテランが会社を去ってる話と旅客機のハイテク化の話は全然別の話ではないですか? 大新聞様はどうしてもハイテク化=省力化=人切りにつなげたいようですし、実際そういう時期も確かにありました*2。でも、今航空会社がリストラしてるのはハイテク化して省力化が可能になったからではなくて、経済的な問題でしょう。

ああ、ハイテク化で昔ほど熟練していなくても飛ばしたり、整備したりできるようになったから、技量が落ちてるんじゃないか、という心配ですか。まあ、それはそれであるでしょうね。別に航空業界に限らず、世の中全般で。例えば、パソコンやケータイの漢字変換に頼る余り、漢字が書けなくなったりなんてのが身近な例でしょうか。

でも、それならば個々のパイロットや整備士、運行に関わるクルー達は努力している人が多いと思いますよ。そういうことはむしろ経営側に言うことでしょう。そうすると、また「ハイテク化」とかはまた違う話なんですよね。

もっとも、両事故機とも操縦士は経験豊かな人と報じていなかったでしたっけ? もちろん、どんなに経験豊かでも、疲労が蓄積していたり等、実力が発揮できない状態ではしょうがないですけど。

至る所に、地道なプロセスを踏み外せばたちまち落ち込む深い穴が、口を開けている。培ってきた現場の人間力が不況で細り、安全を脅かしてはいないだろうか。海の向こうの話と決め込んではいられない

当然、海の向こうの話ではないことを現場は知っています。大新聞様はご存じなかったようですね。まだ起きてないだけ、ですよ。いや、実際にはもう起きてるんですけどね。

奇跡のあと、米国やオランダで旅客機の痛ましい事故が起きている。合理化のあまり必要な筋肉まで削いでいなかったかどうかが、気にかかる。

気にかかるなら調べましょうよ。大新聞様はそれができるでしょ*3。そうしてから初めて、人を動かすことができるのでは。ああ、すいません。大新聞様は書いてる中身に無責任なんでしたっけ。報道の中立を盾に主観を客観に見せかけて、叩きやすいところを叩いて無責任に傍観するのが仕事でした。

*1:もっとも、操縦ミス説も見かけましたし、まだ結論が出せる時期ではないでしょう。

*2:昔は3人で飛ばしていた大型旅客機も今は2人乗務が当たり前ですし、整備もハイテク化でより迅速にできるようになった=人減らしが可能なのは事実ですが。でも、それはもはや一昔前、ですよ。もちろん、古い機材を今でも使っているところは世界中にはたくさんあって、そこでは整備の手抜きとかもあるかもしれませんが、そこはそこでハイテク化とは無縁ですし。

*3:もちろん、天声人語を書くようなご老体にやれとは言いません。高い給料をもらっている有能な記者がたくさんいるのでしょ。