焼き鳥1本分で忘年会帰りの満員電車は解消する

大筋はよいのだけど

まあ、大筋として深夜の満員電車はビジネスチャンスというのは分からなくもないです。もうちょっと柔軟な運用ができてもいいんじゃないの?とは思います。でも、京急すらできてないことが、JR東日本にできるわけないので、現実を見るべきじゃないかと。いや、もちろん、変わっていかないといけないというのはありますが、JR東日本に限らず、富裕層から大金を毟り取る事しか考えてないでしょうし、こんな地道な努力はしないだろうな、という気はします。

ただ気になるのがタイトルに直接かかわる以下の部分。

簡単な試算をします。
23時過ぎに、10両編成1400人定員の列車に3000人が乗り、混雑率が200%強だとします。
1本増発するための運転士・車掌の人件費と電気代を併せて例えば3〜6万円だとすると3000人の割り勘で1人わずか10〜20円です。居酒屋の焼き鳥1本分にもなりません。

この算定根拠が妥当か不明ですが、肝心の経費が完全な想像で根拠が書いてないので話になりません。少なくとも6万円とかで1本増発できるとか本当?って感じます。
つまらないツッコミを入れると、追加コストは原価ベースだけど、居酒屋の焼き鳥1本は原価いくら?

どこまで増発できる?

でまあ、仮に上記が本当として、儲かっている山手線とかは増発できたとして、末端はどこまで増発できるの?って感じです。まあ、横須賀線なんて絶対やらないよな、やっても横浜か、大船か。まあ、それで助かる人もいるので良いのでしょうけど。*1

それはともかく、環状線の山手線を除くと、普通の路線は直線上を行ったり来たりするわけです。終電近くの電車というのは、翌日の始発から何本かの列車の送り込みを兼ねてます。で、車両を置いておく所も有限なので、増発するとあふれる部分が出てきます。横須賀線の場合、久里浜の留置線は昔はたくさんあったのですが、だいぶ減らしたのでもうギリギリしかないでしょう。余剰の設備を持っていても意味がないですから、そうしているはずです。そうすると、増発分は置いておく所がないので、近くの車両基地や留置線まで戻さないといけません。
横須賀線は終電間際の上りがない時間は下りが通常より短い10分間隔で走りますが、戻す分の上りがあると12分間隔に広げないといけないですね。これは横須賀線の事情ですが、他の路線だって多かれ少なかれ影響は出ます。バスの増発みたいにほいほいできるものでもないような気はします*2

後半わけわかめ

ただまあ、終電時間帯増発の件はまあよいのですが、後半の方に行くと、駅も電車も2階建てみたいなわけのわからない話が出てきます。

深夜の満員電車の対策でも触れましたが、良質で高額なサービスと、良質でないけど低額なサービスを選べるようにします。具体的には、着席と立ち席で値段差を付けます。
A駅からB駅へ立ち席で移動する基本運賃と、着席するための割増料金の2段構成とするのです。基本運賃は、現行の普通運賃より値下げします。
(中略)
それにより、利用者は全ての列車で着席サービスを選択でき、鉄道会社は収益を増やせ、輸送効率も低下しません。

えー。なんでそうなるの。着席サービスの定員は決まっているので、それを超えるニーズがあったら「利用者はすべての列車で着席サービスを選択」できません。そもそもどうやって、両者を区別するのでしょう。車内トラブルの元じゃないでしょうか。
車両ごと分ける? 定期券の人はどうするのとか、ちょっと考えるだけで疑問が湧き出てきます。まあ、個別の問題は鉄道事業者が考えろってのがこの著者のスタンスでしょう。あくまで考え方を提示しているだけ、と。

まとめ

後半はもう何なので、タイトルに関連する部分だけでまとめます。考え方を変えてほしいし、できることはやってほしいです。割増運賃も別によいですけど、まあ、いろいろ難しいかな、とは思います。そんなこと言ってたら先に進まないのも確かですけど。
でも、鉄道会社はやりたがらないですよね。儲かっている路線であれば、そこまでしてさらに儲ける必要もなく*3、儲かってないところはこれで改善することを目指すかというと、もっと他のことをやるべきなきがします。

逆にいうと、鉄道会社がやるというよりは、バス会社とかタクシー会社がビジネスチャンスという気もします。深夜バスを走らせるとか、タクシーは地方のバス代替みたいに拠点間の輸送で乗合的なものをやって、行った先は当地のタクシーとかに任せるとか。

*1:なお、横須賀線は金曜のみ逗子最終の前に大船最終が増えます。

*2:バスの増発がホイホイできるか分かりませんが、少なくとも線路の保守に相当するものがないし、車両と人の手配さえつけば、後は交通ルールに従って走らせるだけですので、色々考えなくてよいかな、とは思います。

*3:鉄道の場合100円稼ぐのにいくらかかるか、という指標がよく使われます。山手線は50円ちょっとらしいですが、それが55円になることにどれだけの意味があるのか、という話です。