京都人情捜査ファイル

いやこれ、違法捜査だよね。刑事物かと思ったら、ハングマンとか必殺とか、そちらの方の話でした。

主人公は警察官ではあるのでしょうが、本来捜査権はない被害者支援室の所属です。彼が仲間達とともに被害者のためにいろいろ支援するのですが、途中から話がおかしくなってきます。よくわからない「警務部長」という人物(京都府警の偉い人?)に会って「特捜」を許可されると、捜査をすることができるのです。とはいえ、表向きは捜査権はありませんので、食堂の従業員に紛れ込んだり(これ、たまたま空きがあったの?でも、被害者の葬儀で顔見られてるよね?)とか、果ては勝手に会社に入り込んで事情を調べたりします。極めつけは女たらしな署員が情報システム部門の女性を騙して、会社の人事情報を入手します。いや、これ犯罪でしょ。騙した署員も犯罪なら、情報を持ち出した女性社員も犯罪です(そもそも、警務部長も捜査データを勝手に関係ない部署の人間に渡しているので、これも犯罪です)。
一応警察の組織に属したメンバー達が、犯罪者を捕まえる証拠を得るために犯罪を犯し、何の関係もない社員にも犯罪を犯させるというむちゃくちゃな番組です。
最期、その偉い人がその会社に乗り込んで、社長をおだてると社長が馬鹿みたいに本当のことを喋ってしまい、それが放送で社内全体に流れてしまいます。これも違法ですよね。あ、警務部長は知らぬ存ぜぬを通すのか。盗聴器をしかけたのも被害者支援室のメンバーでしょうから。

でも、社長は悪い奴ではありますし、事件の発端を作ったのは確かですけど、殺人(正確には傷害致死)事件とは直接関係ないのですよね。この社長は成績の悪い社員を追い出すために所謂「追い出し部屋」を作って、日がな1日無意味な作業をさせていたわけです。辞める人間が出ないと、誰が辞めるべきかを討論させて追い打ちをかけるわけです。その議論の中で辞めるべきとされた人物が、頭にきて自分も含めた追い出し部屋の人間と、その管理を任されていた人事部の社員の食事に毒を混ぜたのです。ただ、殺すつもりはなかったらしいので、単なる八つ当たり? それで会社の悪事の露見を狙ったわけでもないらしいです。何がしたかったのかよくわかりません。結果、一人の社員が死んでしまいました。というわけで、発端は社長というか会社なわけです。が、殺人そのものには直接は関係していないのも事実です。

社長の本音が社内に放送された時点で追い出し部屋のメンバーは「ばかばかしい、もう辞めた」と出て行ってしまいます。いや、それならもっと早くに辞めれば。追い出し部屋を知らない一般社員ならともかく、自分たちの立場は分かってるよね。ここで辞めるくらいなら先に辞めればよかったのに。しかし、ただ1人だけ、俺は辞めない、と残った人物が居ました。それが犯人です。そこで主人公と死んでしまった社員の息子と犯人の最期の対決となります。と言うか、この茶番の意味はあったの? まあ、確かにあんなのが社内に流れれば大混乱になるし、そうでなければこうすんなりと入り込めなかったでしょう。でも、この会社、たぶんもうだめですよね。追い出し部屋以外の社員も何人も辞めてしまい、業務が立ちゆかなくなるのでは。そうなったら残った社員も転職を考えざる得なくなり...。犯人が「このご時世に転職先なんかそうそうない」と言ってますが、まさにその通りです。犯罪とは直接は関係ない会社を破綻させ、その社員の多くを路頭に迷わせることを平気で行っているのです。正義の名の下に。社長や会社は自業自得とは言え、関係ない社員がかわいそうです。

まあ、単なる裏課業ものならそこまで気にしなくてもよいでしょうが、それを警察に属する人間が行っているというのが非常に違和感があります。これ、刑事物だと悪者の方ですよ。たまに刑事物でも、捜査権のない署員とかが「正義」と称して裏捜査を行うという話が出てきます。そうすると、たいていやり過ぎて主人公の刑事に「そんなのは正義でも何でもない」と一刀両断されて捕まるパターンです。

裏課業ものなら、関わっている裏側の人物達は自分たちが悪であるという認識を持ってやっているのが普通ですが、この第1回放送だけでは彼らが自分たちが悪であるという認識があるのか不明です。バレたら京都府警全体に関わる大不祥事になるのですが。