今日の気になる

よく分からない「5分で分かる知財

@ITに「5分で分かる知財」という記事が有り、わかりやすいと言えば分かりやすいのですが、著作権産業財産権(工業所有権)をごっちゃに語ってるところに違和感があります。

著作権産業財産権には大きな違いがあります。前者は基本的に権利者のもつ権利を保護するのが目的です。後者は、権利者の持つ権利を認める代わりに、基本的にはそれを広く世の中で使ってもらうことが本来の目的です*1。元々、後者には今までになかったもの、という縛りがあるので、そういうものに対して一定期間、権利を与えると共に、それを世の中で使うことで社会全体をよくしましょう、と言うのが産業財産権の考え方です*2著作権も期限がありますが、産業財産権から見れば元々長い上に、何度か期限が延長されています*3

また、著作物は権利者が公表するかどうかを任意に選択できますが、産業財産権は原則として公開されることが前提です。著作権は自動的に発生するが、産業財産権は申請が必要という違いもあります。これらは根本的な考えが前述のように違っていることから生じているものです。こうした根本となるべき考え方の違いに触れないで、表面的な相違点だけ並べてごちゃまぜに語るのは、少し違う気がします。

件の記事は、著作権について話したいのか、産業財産権について話したいのかが不明確で、知的財産(権)として時に著作権の話をしたり、時に産業財産権の話をしたりと、かえって混乱しそうです。例えば、「産業財産権の最大のポイントは保護と利用のバランス」という見出しの項がありますが、その中身は著作権の話です。百歩譲って見出しを「知的財産権」とすれば、まだ理解できますが、どちらにしろ中身は産業財産権の話ではありません。

そもそも発明を技術的アイデアなんて書いているのもちょっとどうかなと思います。私の考えではアイデアは発明ではありません。日本の特許法では発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています。自然法則を利用とか高度なものって辺りはとりあえず置いておくとして、柱は「技術的思想の創作」となります。技術的思想、そのものではありません。実際に作れないものは発明とは言えないし、少なくとも特許が認められることはありません。現物がないにしろ、現状の技術で実現できるだけの裏付けが必要です。

私は知財の専門家ではないので、知財のプロから見れば私の文章には色々突っ込みどころがあるかと思います。そんな私から見て突っ込みどころが多い時点で、ちょっとどうかな、というのが件の記事に対する感想です。

*1:権利保護は主ではなく従です。主は新しい技術を広めることです。よって、国によってはその権利を実際に産業上で利用しないと権利を認めないという制度もあります。商標については実際に使っていないものは無効となることがあります。また、あまりに一般的になりすぎると商標としての意味がなくなるため、やはり無効になることもあります。

*2:商標についてはちょっと特殊です。期限もありませんし、もちろん新しいとかいう縛りもないですから。

*3:ウォルト・ディズニーのおかげですね。