不思議な河野理論

河野太郎議員がブログで民主党が進める事業仕分けを賞賛している。また、自分たちの時にも評価して欲しかったと語っている。その根拠として例のスパコンの話を持ち出して、様はやり方が悪いのだから予算を付けるべきではない、との主張らしい。

個人的にはこの主張はすごく不思議だし、単にプロジェクトを潰したいだけとしか思えない。今回のスパコンに限らず、行政主導の日の丸プロジェクトに問題が多いことは昔から明らかだった。たとえば、Σプロジェクト。伝説のダメプロジェクトだ。大学時代のとある教授の講義でも、後輩からお金をいくらでも使えるからと誘われたなんて話を聞いたりした。
たとえば、インパク。インターネット博覧会と称して、どうしようもないWEBサイトを官公庁や企業に作らせて景気対策にしようとしたΣほどの金額的なインパクトはないが、やっぱり失敗プロジェクトと言われている。

これらのプロジェクトの運営や進め方、管理手法に問題があったのは明らかだろう。また、今回のスパコン開発についても、おそらく、あそこに書かれているとおりの問題があったのだろう。で、河野氏は予算を止めてしかるべきであったと主張し、安易に予算を戻すべきではないと主張している。はてなブックマークでも賛同コメントがいくつか付いている。

ほんとうにそうなのか?

河野氏自身はスパコンが大事だと言うことは分かっている、と書いている。では、予算を止めて、この後いったいどうするのだろうか?まあ、外野である河野氏を責めてもしょうがないので、民主党や仕分け人に問うべきかもしれないが、誰に問うにしろ、で、止めた後はどうするのか?と問いたい。

必要なことは分かっている。今のやり方が悪いことも分かっている。だったら、普通考えるのはどうやったらうまく行くのか、ではないのか? やり方が悪いから予算を止めます、っていう短絡的な結論が出てきて、それで終わっているところが今回の仕分けとやらが所詮パフォーマンスであることを明白に示していると感じる。

結局、今回の仕分けとやらは、単純にコストだけを見て可否を判断している。それについては、閣内の防衛大臣からも疑問視する声が出ている。そうやって予算が浮いて、他に回せるというのは確かによいことかもしれない。が、本来やるべきは止めるか止めないか、予算を削るか削らないかの議論ではないのではないか。

たとえば、大学受験を控えているが成績が上がらない高校生がいたとして、まあ、勉強のやり方が悪いというのが理由だったとする。で、河野理論が言っているのは、勉強のやり方が悪いのだから参考書代も塾代も要らない。いっそ、大学受験も無駄だから止めたらどうか。ついでに高校も辞めて働いたらどうか、ということだろう。高校生はいろいろと理由を挙げようとするが、それは関係ない。勉強のやり方が悪いのだから意味はないと主張し、有効な反論ができないとか、論点がずれているとか決めつける。本当にすべきなのは、彼にあった勉強のやり方を模索したり、どんな点が問題なのかを考えることだろう。

河野氏は仕分け人は皆科学技術が大事なこともスパコンが大事なことも分かっていると書いているが、それを言うなら、仕分け人を批判している人は、スパコンプロジェクトの運営がまずいことを分かっている。その上で、予算を削る前にすることがあるだろうと言っているのだと思うのだが、どうだろうか。そして「1番でなくてもよい」等という考え方自体を批判しているのだ。そこにプロジェクトの進め方がどうとかいう話は関係ない。プロジェクトの進め方が悪いのであればただせばよい。正直、かなり難しいとは思うが、止めてしまえというよりは建設的だし、大事だと分かっているというのであれば、そこに取り組む価値もあるだろう。

同じことはGXロケットにも言える。と言うか、GXについては資料が間違っていることや、引き合いがあることを意図的に隠していたことがすでに報道されている。それを理解して河野氏はやはりGXロケットにも予算を戻すべきではないと書いている。同種のロケットはロシア、中国、韓国などが開発しているというのに、だ。スパコンについてはいろいろと上げて叩いて、それとさも同列かのようにGXロケットを併記して、こちらも同様だと思わせる悪意のある書き方だ。スパコンと同様にGXロケットにも問題があるというのであれば、同じように根拠を示すべきだろう。もっとも、根拠があったとしても、また、実際にいろいろ問題はあるだろうが、だから予算を削れ、止めてしまえというのは暴論だろう。正直、そんな主張の河野氏の言うことは全く信用できない。目先に金があればそれでよしとして、長期的な視点が全くないではないか。

そして、これだけ批判があるにもかかわらず、それに対する反省は無しで自画自賛して終了した事業仕分け行政刷新会議とやらも全く信用できない。それでは彼らが野党時代に批判していた自民党政権とまったく同じではないか。

今回の仕分けについて、もちろんよいところがあったことは認める。ただ、どちらにしても、事業仕分けについてのちゃんとした総括を、自画自賛ではなくきちんとして欲しいものだ。それは第三者が行うのが望ましい。

まあ、期待はしない。