なぜ多重下請けが無くならないか

いろんな人がいろんなことを書いていますね。まあ、顧客に変われなんてのは論外ですが*1。そもそも顧客が欲しいのは手助けしてくれる人ではなくて、いい感じで作ってくれる人です。顧客は自分たちでシステムを作るなんて手間はかけたくありません。それは、そのために人を雇わなければいけない=固定費の増加ですから、あり得ません。よほどその部門に人が有り余ってるなら別ですけど、今のご時世にそんな馬鹿な会社はありません*2

で、ある程度経験なり会社生活を積んで、会社がどう動くか知ればわかるでしょうけど、売り上げを毎年アップしていこうとすると*3、多重下請けに頼らざる得ないのですよ。

会社の売り上げを伸ばす方法はどんなものがあるでしょうか。作業の効率化とかあるでしょうが、究極的には一人にたくさん仕事をさせるか、人を増やすかです。人を増やすことは今企業は控えたいので、自然に一人にたくさんの仕事をさせることになります。

一人の作業量は残業させるにしても限界があるので、ある人の作業量を増やすには、作業効率を上げるか、そもそも時間のかかる作業は外に出して、その人がたくさん仕事をできるようにするかしかありません。そうすると、いわゆる「下流工程」はどんどん外に出していくことになります。自分もちょっと前までは「自分で手を動かさないで部下なり外注なりにどんどん仕事を出して、その分別の仕事をしろ」と言われたものです。そうやって、会社の技術は空洞化してゆきます*4

これがまあSIerでの話だとして、その下請けA社の中でも同じような話が進んでいます。で、その下請けのB社でもやはり同じような話が進んでいます。そうやって、多重下請けが進むのですね。

受発注の仕組みや適正価格の話とか、営業をしたくないからだろとか、いろいろ言われてますし、確かにそれもあるのですが、究極的には売り上げ至上主義を何とかしない限りは多重下請けは無くならないと思ってます。個人で毎年年収をアップさせて行くなんて言ったら、もうちょっと地面に足を付けて地道にやれとか言われそうなものですが、なぜか法人になるとそういうことは言われないのですよね。

*1:大きな所はたいていシステム子会社をつくって分離してしまったので、そういうところでは顧客が主導してシステムを作るなんて無理です。

*2:役に立たない年寄りを大量に抱えてる、とかはまた別問題。どのみち、その人達にシステムを作らせるわけにはいかないですし。

*3:今のご時世だと売り上げを維持しようとしても、かな。

*4:今は逆に内製でやれ、と言われますけどね。でも急にできるようにはならないので、社内でリソースが調達できませんでした。結局、外注頼みです。人を回すことしかできない上流技術者はいても、実際に物作りができる人なんていないのだから、自分たちでつくるなんて当分無理ですね。そうできるようにするには、1年とか2年とかじっくり時間をかける必要がありますが、そんな余裕が今の情勢下にあるはずもありません。景気がいいときに「ガンガン行こうぜ」で売り上げを伸ばしたツケです。